2023/04/23
前回のあらすじ
大腸がん(結腸がん)であることが確実となり、周囲の人へ報告したり情報収集したりと動き出したさきさん。直腸がん経験者Eさんから、香港で一番の大腸がん手術専門医・ドクターPを教えてもらい、以後の主治医に。大腸のおよそ3分の1を切り取る腹腔鏡手術が3日後に決まった。海外旅行に使うはずだったスーツケースに入院道具を入れる。悲しいけれど、がん発覚でもポジティブに頑張れるのは、子どもたちや家族、そして付き合っているパートナーがいるおかげ。手術当日、授業最終日の子どもたちを朝見送った後、病院へ。
手術室へ入ると、男性の麻酔医がいました。わたしは主治医のドクターPの顔を見るまで不安でしたが、ドクターPが後から来て、軽く挨拶をしたらすぐに麻酔を入れられ、あっという間に深い眠りにつきました。
3時間ほど経って目を覚ますと、なんだか喉が痛い。麻酔薬の影響らしい。喉だけじゃなく、手術で切った部分も痛い。ナースが通りかかったので、かすれた声で何とか「痛い、痛い」と言うと、痛み止めの薬を入れてくれました。びっくりするほど体にも声にも力が入りません。
その後、パートナーが待っている部屋に移動しましたが、声が出ずに最初は何も言えず、バタバタと手術用のベッドから自分のベッドへ移動。この時の振動が地味に痛かったのを覚えています。人生初、全身麻酔の手術。こんなにも体に力が入らないとは! 家族やメッセージをくれていた友人たちに返信したくても、携帯で文字すらちゃんと打てないので、パートナーに代わりに打ってもらいました。12歳の娘からも「ママ、それで? 手術はどうだったの?」とメールが来ていて、普段あまり心配しない娘もちゃんと気にかけてくれているんだなあと、ほっこりしました。
手術前には、むくみ防止のために着圧ソックスを履きました。術後数日このままです。
手術後真っ先に思ったことは、とにかく喉が渇いていること。無理もない。前日夜から一切水をとってなかったから。そして手術が終わったのは17時頃。ナースに水分は少しずつとるようにと言われたけど、そんなの無理でぐびぐび飲んじゃいました。歯磨きも水を飲むのも、パートナーに手を借りないとできなくて、彼が夜になって帰った後も、水を飲みたくなる度にナースコールしました。
香港では基本的にドクターは特定の病院所属ではなく、いろんな病院に患者さんを持っている場合が多く、わたしのドクターも多忙なオペスケジュールの中、23時を過ぎてから回診に来てくれました。自分の命を救ってくれた恩人に見えて、お礼の言葉が思わずでてきました。手術は無事に成功。大腸の3分の1を切除したとのこと。明日はおかゆの上澄みのみ、明後日からおかゆOKと言われました。
術後1日目。夜中に何度もナースが血圧を測りに来た割にはよく眠れました。土曜だったのでパートナーがほぼ丸一日一緒にいてくれました。おかゆの上澄みを買ってきてくれたので、食べさせてもらいました。香港の病院は日本とは違って、入院中の食事は毎回オーダーしないといけないのですが、病院内で作ったものより、外のものの方がおいしいので、毎回彼に持ってきてもらうことに。2日ぶりに食べたおかゆの上澄みは、とても体に優しくしみわたり、少し体にエネルギーが湧きました。
とりあえずまだ動けなくて暇なので、この日は映画を見たり、昼寝をしたりして一日が過ぎました。尿管が入っているのでトイレに行く必要もないし、寝返りもゆっくりだけどなんとかうてるようになりました。
でもお腹は手術の影響でパンパンになっているし、深呼吸すると痛い。そして今回の腹腔鏡手術でお腹にあけた5つの穴のうちの1つから管がつながっていて、そこから薄赤い謎の液体が出てきて容器にたまる仕組みになっていて、これがすごく気持ち悪かったです。
術後2日目、日曜日。この日は友だちがお見舞いにきてくれました。友だちのパートナーは肝臓がん闘病中なので、わたしまでがんになったのがショックだったようで、わたしを見るなり泣き出してしまいました。大丈夫だよ、わたしは! 絶対に良くなるし、きっと深刻じゃないよ!
パートナーも一緒にいろんな話をしていると、おならが出てきました。術後にガスが出るのは、腸が活動している証拠らしくとても重要だそう。さらに便意もあったので、ナースを呼んでトイレに行きたいことを伝えると、なんとおまるがついた椅子を持ってきたんです。
いやいや、こんなの恥ずかしすぎるし自分でトイレに行ってする! と、頑張って体を起こし立とうとすると頭がくらくらしたので、ナースと友だちに支えてもらって何とか術後初めてのトイレに行くことができました。
これを機に一人で歩く練習をしたら、ゆっくり歩けるようになりました。大腸がんの手術後は一般的に、筋肉が衰えないように翌日から歩くことが推奨されています。次の日から暇さえあれば歩くようになりました。一番気になることは、手術後にしかわからない生体検査の結果です。他臓器転移がないことは先日のスキャンで分かっていたのですが、リンパ転移の有無はこの生体検査の結果次第。ドクター曰く数日はかかるとのこと。リンパ転移していたら抗がん剤治療がほぼ確定なので、すごく心配でした。でも結果が来るまでは体の回復のみに集中しようと思い、なるべく明るく過ごしました。
つづく
福山さき
2012年、東京から香港に移住。フリーランスインストラクター。小学生、中学生のママ。趣味は、料理とピアノ。
Hong Kong LEI (ホンコン・レイ) は、香港の生活をもっと楽しくする女性や家族向けライフスタイルマガジンです。
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2 件の意見
コメントいただきありがとうございます!筆者のさきさんにもいただいたコメントをお伝えしました。次回コラムは、来月下旬になります。「待っています」のお言葉、嬉しいです!(編集部より)
こちらの記事をありがとうございます。拝読させていただきました。手術後の大変さがすごく伝わってきました。生体検査の結果が良い結果であることを心から願いつつ次回の記事を待っています。