2023/07/19

2023年7月は、ブルース・リー(李小龍)がこの世を去って50年目の夏です。32年の短い人生でありながら、 彼が世界に残したものは、歳月を重ねるごとに純度を増し、いつの時代にも人を魅了する宝玉となりました。

武道家として、自身が修得した全ての武道、スポーツを結集させ生み出したジークンドー(截拳道)という武術スタイル・哲学は、今日のMMA(総合格闘技)の原型とも言われています。また俳優、脚本家、映画プロデューサーとして、香港のカンフー映画を世界に知らしめ、洋の東西を問わず新たなアクション映画の礎を築いたことは歴史の通りです。

ブルース・リーは、自分らしく生きるために、意図を以って人生をデザインした芸術家です。彼のように偉大なことを成し遂げることは難しいかもしれませんが、「こう生きたい」と思い描きながら人生を歩むことはわたしたちにも出来るはずです。

今回のHello From Editorは、香港文化博物館のブルース・リー展特集。ブルース・リーが映画の中で言ったセリフ「Don’t think. Feel」の訓えのもと、展示の中で筆者の心に響いた部分をご紹介したいと思います。

筆者は剣道有段者・太極拳経験者で、武士道精神や中国武術に憧れはあるものの、殴る蹴るの乱闘、流血シーンは苦手。ブルース・リーといえば、闘っている時の眉間にしわを寄せた顔、「アチョー!」と叫んでいる顔などが思い浮かびますが、今回は、爽やかな笑顔や穏やかな顔、スマートな彼の内面に注目していきます。


「ブルース・リーって誰?」という方のために……

ブルース・リー(李小龍/Bruce Lee) 本名:李 振藩

1940年、アメリカ生まれの香港人。 中国武術、武道家であり、ハリウッドで活躍したアジア初のアクション俳優。子役として香港映画に多数出演。1971年公開の香港カンフー映画『唐山大兄 THE BIG BOSS(邦題:ドラゴン危機一髪)』が大ヒットを記録し、ブルース・リー旋風を巻き起こすも、1973年に映画製作中に急逝。代表する主演映画5作品で、香港映画と中国武術の魅力、パワーを世界的に知らしめた。

South China Morning Postのインスタグラムでもブルース・リーの生涯を辿る動画がアップされました。動画後半には香港文化博物館の「平凡・不平凡――李小龍」展も紹介されています。

https://www.instagram.com/reel/CuyJ6fNNkJt/?igshid=MzRlODBiNWFlZA==


目次

香港文化博物館について

「平凡・不平凡――李小龍 A Man Beyond the Ordinary: Bruce Lee」

「李小龍――経典永続 Bruce Lee: a Timeless Classic」


香港文化博物館について

香港文化博物館(HKHM)は、康樂及文化事務署管轄の総合博物館で、歴史、芸術、文化のさまざまな分野の展示、普及活動を行っています。館内には12の展示室があり、展示面積は7,500平方メートル。常設展示は、金庸館、広東オペラ館、徐展堂中国芸術館、趙少昂芸術館、児童探知館の5つ。その他、さまざまな特別展やプログラムが折々で催されています。

香港文化博物館
香港新界沙田文林路一號

Hong Kong Heritage Museum – Highlights (hk.heritage.museum)

開館日
月、水~金 :  10~18時
土、日、祝日 :  10~19時

休館日
火曜(祝日の場合は除く)、旧正月初日と2日目

2013年開催の特別展「武・芸・人生――李小龍」オープニングを記念し、彫刻家 朱達誠氏に依頼して製作された高さ3.5mのブルース・リーブロンズ像。香港文化博物館の入口に設置されています。

 

「平凡・不平凡――李小龍 A Man Beyond the Ordinary: Bruce Lee」展

「平凡・不平凡――李小龍 A Man Beyond the Ordinary: Bruce Lee」は、博物館2階テーマギャラリー6にて開催中。ブルース・リー財団とのコラボレーションで約400点の貴重な遺品の展示と、大規模な光と音のマルチメディア・ディスプレイ、没入型インスタレーションを駆使し、伝説となったブルース・リーの人生を感じることができます。この展覧会は入場無料で、2026年まで開催予定です。


 I am actualizing myself daily to be an artist of life— Bruce Lee

人生の芸術家であるために、日々の自己実現に努めている


展示室の様子。展示室は撮影禁止です。掲載写真は香港文化博物館提供のものです。

展示室入ってすぐに、ブルース・リーといえば……という表情の彼や武術を行うシルエットが大規模ディスプレイに現れます。

詠春拳の師、イップ・マン(葉問)とブルース・リーの3Dアニメーションがあり、横にはブルース・リーが使用していた木人椿が展示されています。武道は、日々の鍛錬と克己心が重要。木人椿で黙々と地道に修練できるのは、ひとえに強くなりたい、理想の自分になりたいという強い思いからでしょう。

家族写真のコーナー。アメリカで出会ったスウェーデン系イギリス人のリンダ・エメリーと1964年に結婚。10年にも満たない家族との時間でしたが、ブルース・リーがこの家族に愛と心の平穏を見出していたことは、写真の中の穏やかで優しい笑顔から覗えます。

仕事や武道仲間たちとの写真などが展示されているコーナー。一つずつ写真をお見せできませんが、仲間たちと写るブルース・リーは優しく嬉しそうな表情が多いです。明確な目標がある彼の元に集まる仲間を大切に思っていたのでしょう。


個別資料の紹介

映画『細路祥(The Kid)』プログラム(1950)香港文化博物館所蔵

ブルース・リー10歳の初主演作。この時の俳優名は「李龍」。批評家から絶賛され、子役としての地位を確立しました。

ブルース・リーが使用したフェンシングマスク(ブルース・リー財団提供)

フェンシングスーツを着たブルース・リーの写真(ブルース・リー財団提供)
ブルース・リーがフェンシングを学んだのは香港にいた10代の時。アメリカに渡った後、フェンシングのコンセプトとテクニックを自身の武術体系に取り入れました。あどけなさが残る爽やかな笑顔が印象的な写真ですね。

シアトルの東部に位置するワシントン湖でのブルース・リー(ブルース・リー財団提供)。リラックスした表情と雰囲気も格好いいですね。

ブルース・リー直筆の詩 “Boating in Lake Washington” (1963)ブルース・リー財団提供
ブルース・リーは、武術の鍛錬や演技と並行して、余暇には詩を書くことを楽しんでいました。彼の詩には、センチメンタルな一面が強く表れています。ワシントン湖はお気に入りの場所のひとつで湖畔で瞑想などもしていたそうです。

 

香港文化博物館の公式YouTube (1) 「平凡•不平凡—李小龍」展廳導覽 – YouTubeよりご紹介。展示会場には大スクリーンにブルース・リーの書架が再現されています。読書家であったブルース・リーの自宅蔵書数はなんと2500冊以上。本のジャンルは哲学、文学、宗教、武道、心理、フィットネスなど多岐に渡ります。その中の一部の本をタッチパネルで読むことができ、ブルース・リーが引いたアンダーラインや思索のメモ書きなどを見ることができます。

ブルース・リー直筆の「My Definite Chief Aim (わたしの明確目標)」1969年1月(ブルース・リー財団所蔵)。写真は『武・芸・人生 李小龍』(康樂及文化事務署出版・香港文化博物館編製、初版2013年、2018年重版)より。ブルース・リーが意図を以って人生をデザインしていたことが分かる資料。内容は「アメリカで最初の、最もギャラの高いオリエンタルスーパースターになる」「世界的な名声を得る」「自分らしく生き、心の調和と幸せを得る」などが書かれています。

 

ブルース・リーが妻リンダに宛てた直筆手紙、宛名面(1971)ブルース・リー財団提供
タイ・パクチョンでの『唐山大兄(The Big Boss)』撮影中に、アメリカにいた妻リンダに宛てて書かれました。宛名の裏面には、『唐山大兄(The Big Boss)』の監督が交代したことなどの他に、「君がここに居てくれたらいいのに」「君と子どもたちに会いたい」「香港に来て会わないか」と想いを伝えています。

1970年代の家族写真(ブルース・リー、妻リンダ、長男ブランドン、長女シャノン)ブルース・リー財団提供


展示を観るのにちょっと疲れたら、休憩を。併設カフェ「牧羊少年咖啡館 The Alchemist Cafe」とギフトショップ「Passage」があります。


Hong Kong LEIでは、過去にブルース・リーを取り上げたコンテンツがあります。こちらもぜひご覧ください。

第5回 キリ流香港散策🇭🇰中国武術家『ブルース・リー』の軌跡を尖沙咀で辿る

Old Hong Kong in Colour (彩られ蘇る香港今昔)第12回 没後50年、ブルース・リー – 香港で暮らす編集者が送るカルチャー、イベント情報 HONG KONG LEI

 

 

マヤのエネルギーに乗って軽やかに生きる 第3回「もう一人の自分を知り、目覚めさせる」 – 香港で暮らす編集者が送るカルチャー、イベント情報 HONG KONG LEI

 


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