2023/12/12

毎年クリスマスの風物詩、バレエ「くるみ割り人形」の告知が始まると、一気に華やいだホリデー気分になるのはわたしだけではないはず。今回のHello From Editor では、香港バレエ団のくるみ割り人形をご紹介しつつ、香港バレエ団の裏側を少しだけ覗いてみましょう! きっとこれを読み終わるころには、香港バレエ団をこれまで以上に身近に感じられるだけでなく、バレエも楽しめて、もっと応援したくなるはず!


目次

(1)

▶︎香港バレエ団と、ダンサーたち

▶︎香港バレエ団ならではの「くるみ割り人形」の楽しみ方

(2)
▶︎リハーサルを訪問!
日本人ダンサーのご紹介
ドレスリハーサル
▶︎インタビュー
神崎開さん(公開中!)
Cover Story:高野陽年さん
( 2024年1月20日に公開しました)
(3)
▶︎舞台裏を覗いてみよう!
▶︎セット
▶︎衣装の工房に入れていただきました!
ー鬼才ディレクター
ー工房で作っているもの
ー衣装の工夫
ーおもしろ衣装
▶︎シーズンの演目、注目など

※3ページ目は、12月15日に公式LINEで配信します!


【香港バレエ団と、ダンサーたち】

キューバ系アメリカ人の芸術監督セプティム・ウェバー氏率いる香港バレエ団には、香港を拠点に現在ダンサーの指導役であり牽引役でもある7名のバレエマスターと、50名のダンサーが在籍。その他、衣装やセットデザイナー、ダンサーのスケジュールや体調管理をするカンパニー・マネージャー、舞台を滞りなく進める舞台監督やリハーサルピアニストなどの裏方スタッフ、バレエ団の運営や対外へのマーケティングなどを取り仕切るアドミなどが香港バレエ団で働いています。公演は、9月から翌年6月までのシーズンで演目が合計8本。バレエ団の顔ぶれはインターナショナルで、香港、中国本土、アメリカ、カナダ、プエルトリコ、日本などから集まっているため、リハーサルでも言語は、広東語、普通話、英語が飛び交っています。日本からは現在5人の男性ダンサーと1人の女性ダンサー、そして1人のバレエマスターが在籍しています。

【香港バレエ団ならではの「くるみ割り人形」の楽しみ方】

くるみ割り人形は、チャイコフスキーが作曲したバレエ音楽で、1892年に初めてロシアで上演されました。オリジナルの童話は1816年に書かれたドイツのE.T.A.ホフマンによる『くるみ割り人形とねずみの王様』( Nußknacker und Mausekönig)です。

お話は、クリスマス・イヴにくるみ割り人形を贈られた少女クララが、うとうとしてしまった12時の鐘が鳴る頃、体が小さくなり人形たちの世界に迷い込んでしまいます。そこではくるみ割り人形や兵隊たちが、大きなネズミと戦っていました。クララは一緒に応戦してくるみ割り人形を助けてあげると、勝利したくるみ割り人形は魔法が解けて王子に変わり、お礼にクララを冬の魔法の森へと誘います。クララと王子は森の雪の精から歓迎を受け、美しく楽しいお菓子の世界を旅します。


くるみ割り人形を持つクララの後ろに立つのはクララの両親と当時の香港住民の衣装を着たダンサーたち

今ではクリスマスの時期に世界中で演じられてる演目ですが、香港バレエ団のくるみ割り人形はとてもユニークなことでも知られています。それは舞台設定を19世紀のドイツの上流階級から、20世紀初頭の西洋文化が交差する香港の裕福な家族へと移しているところ。賓客として、近代中国の父であり、香港とは密接な繋がりがある孫文とその妻の宋慶齢が登場したり、慈善家であり億万長者でもある何東卿が登場したりと、香港の人にとってはとても馴染みの深い人物が登場します。また、香港の街角で冬の風物詩として見られる焼き栗のベンダーや、孫悟空、ライオンダンス、競馬の騎手、ピンクドルフィン、中国影絵や点心も登場したりと、チャイニーズカルチャー色が満載です。従来の大切な家族や友人と大事な時間を過ごすというテーマを残しつつ、香港の文化をアダプトする方向へ大きくシフトした大胆な解釈と型破りな演出は、これまで何度もくるみ割り人形を観てきたという人ほど、最初から最後までその新鮮さに驚かされるでしょう。

ちなみに、孫文や何東卿は同時に舞台に登場します。白髪で黒いジャケットを着た男性が何東卿。その後に続いて登場するのが孫文です。ぜひ見つけてみてください。

バレエは敷居が高いと思われる人でも、今回の演出ではより親しみやすくエンターテインメント性の高い作品へと変化しているので、年齢に関係なく、特に香港にゆかりのある人であればなおさら楽しめるはずです。と、いうわけで、Hong Kong LEIでは香港在住の方、香港好きな方、香港を観光で訪れる予定がある方は、香港版のくるみ割り人形を激しくおすすめします(今年観られない方はぜひとも来年は計画に入れてみましょう)。観た後は、家族全員で語り合う素敵な時間を持てること間違いなしです!

孫悟空が出てきたり(↑)ライオンダンスに長洲島の饅頭祭り(↓)まで登場。(孫悟空の衣装の秘密は3ページ目に!)

くるみ割り人形の舞台に立つ側からの視点で、香港バレエ団のダンサー高野陽年さんがコラムを執筆しています。とても興味深い内容ですのでぜひ読んでみてくださいね。


本家本元のくるみ割り人形では、第2幕で夢の国へ赴いたクララが、さまざまな国のお菓子の精からダンスのおもてなしを受けます。香港版では、夢の世界に行って香港を象徴する者たちからおもてなしを受けます。これらも従来と全く違う演出になっているので、鑑賞する際は、ぜひ注目して観てくださいね!

 

▶︎1曲目

スペイン調の曲に乗せて真っ赤な衣装に身を包んだフラメンコ風のチョコレートの踊り▶︎▶︎九龍公園や香港動植物公園にいる美しい孔雀がモチーフに。5人の男性ダンサーによる迫力満点の踊りを楽しんで。

 

▶︎2曲目
アラビアンナイトのようなエキゾチックなコーヒーの踊り▶︎▶︎京劇などでも取り上げられる、男女の愛をテーマにしたロマンチックな中国の四大民間伝説の一つ「白蛇伝」の主人公2人が登場します。人間の夫とその妻で白蛇の、美しく官能的で見応えたっぷりな踊りです。

▶︎3曲目
中国服を着たお茶の精が軽快な音楽に乗って飛んだり跳ねたり▶︎▶︎香港で最も重要なお祭りのひとつで、お釈迦様の誕生日を祝いする長洲饅頭のお祭りが登場します。人々は縁起物の饅頭で覆われた高い塔に勇敢に登り、できるだけ多くの饅頭を集めようと競い合ったり、子どもたちの山車やライオンダンスがその場を盛り上げてくれます。

▶︎4曲目
勢いのあるロシア民族舞踊で表す大麦糖の菓子(ねじったキャンディー)の踊り▶︎▶︎躍動感のある香港競馬の騎手の踊り。香港の競馬は150年の歴史があり、香港の人々に最も愛されているスポーツです。舞台所狭しと飛び回り、驚くほどの躍動感とスカッとする爽やかで力強い踊りを楽しめます!


▶︎5曲目
ミルリトン(葦笛タルト菓子) のフランスの軽やかで優雅な踊り▶︎▶︎イエロー・クレステッド・オカメインコとホワイトタイガーの踊り。香港に個体数がとても多いとされるイエロー・クレステッド・オカメインコと、20世紀初頭に香港でかつて目撃されたホワイトタイガーのスリリングなインタラクトを楽しんで!

▶︎6曲目
チョコレートボンボンの子どもたちが、ギゴーニュおばさんのふくらんだスカートから元気に出てきます!▶︎▶︎お母さん点心のセイロのスカートから出てくるのはキュートな点心の子どもたち! 香港の朝食として愛されているさまざまなおいしい点心に見立てたかわいいダンサーたちが踊りに加わります。(後半の衣装工房へお邪魔した記事も合わせてご覧くださいね!)

▶︎7曲目
花のワルツ▶︎▶︎香港のシンボルでもある花、バウヒニア。咲き誇るバウヒニアの花を背景に、12輪の美しく華やかなバウヒニアたちがフィナーレを盛り上げる花のワルツを踊ります。

ここまでご紹介して、香港らしさ満載のくるみ割り人形に興味を持って下さった方も多いのではないでしょうか? 次は、リハーサルを覗いて、さらに深く、くるみ割り人形の魅力と、演じるダンサーたちの素顔にも迫ってみましょう!

 

2ページ:リハーサルを訪問!

1−−3


Hong Kong Ballet

演目「くるみ割り人形」

会場:Grand Theatre, Hong Kong Cultural Centre

With Live Accompaniment
15 -17 (Fri-Sun)*, 19-21 (Tue-Thu)^,
23-26 (Sat-Tue)*.12.2023 7:30pm
16-17 (Sat-Sun) & 23-26 (Sat-Tue) .12.2023 2:30pm*

With Recorded Music
29-30.12.2023 (Fri-Sat) 7:30pm^
30.12.2023 (Sat) 2:30pm^

*$1,200 (Limited VIP Tickets) $720, $490, $340, $220
^$1,000 (Limited VIP Tickets) $680, $480, $340, $220

来場資格:3歳以上

公演時間:およそ1時間45分(休憩1回含む)

チケット販売:https://www.urbtix.hk/event-detail/10574/

コメントをありがとうございます。コメントは承認審査後に閲覧可能になります。少々お待ちください

意見を投稿する

Hong Kong LEI (ホンコン・レイ) は、香港の生活をもっと楽しくする女性や家族向けライフスタイルマガジンです。

Translate »