2023/04/29

街のあちこちでスパイダーツリー(魚木樹)が白と黄色のかわいらしい花を満開に咲かせている4月。中華圏のお祝い『清明節』(御先祖様のお墓を綺麗にします)と西洋圏のお祝い『イースター』が一気にやってきて大忙しの香港でした!

 

イースターと言えば、カラフルにデコレーションされた卵たち。子どもたちも卵の絵の塗り絵を持って帰ってきて色鉛筆で一生懸命塗っていました。青、赤、黄色、それから……。

 

そうだ、色と言えばわたしには困った癖があります。それは英語で話すときに、特定の緑のものを『ブルー』と言ってしまうこと。 「信号がブルーになったから渡るよ!」と言ったり、市場で青リンゴを買おうと思って「ブルーアップルください」って言ってしまったり(正しくはグリーンライトとグリーンアップルですね)。これ、皆様も経験ありませんか?

 

これは、日本語脳のわたしが特定の緑を『青』と言う言葉で認識し、そこから『青=Blue』
と翻訳してしまうために起こる現象なのですが、この『青』と言う漢字。実は香港、そして中国語圏では通常、青リンゴのような黄緑色のことを指す、と言うことを発見しました。

黄緑よりも濃い緑色は、中国語でも日本語と同じように『緑色』というのだそうですが、あえて黄緑色の商品を集めて香港の人たちに見せ、『緑or 青?』と漢字で書いた紙を出したところ、みなさん期待通り『青』を指さしてくれました。
このように現代中国語では黄緑を意味する『青』。Wikiによると、古代中国においては『青』という漢字の使い方とても緩かったのだうです。『青草』『青椒(ピーマン)』ではグリーンを指していますが、『青天白日』ではブルーを指し淤青(あざ)』は紫、『朝如青絲暮成雪』という李白の詩の中の『青絲』い髪意味しています。*
日本で『青』がグリーンだったりブルーだったりするのはもともと中国でも使用法に関して曖昧さがあった名残なのでしょうね。

 

ちなみにここ香港では青信号は『緑燈』と言います。まさにグリーンライト。そして日本人が一般的に使用するブルーという意味での『青』中国語圏では『藍色』と言います。香港人にとってドラえもん『藍色猫型機器人』いうわけです。

 

』がグリーンを意味し、ブルーを『藍色』という中国語では赤色は? 『紅色』と表現します。先日開催された香港電影金像奨、映像に映る映画監督や俳優たちが歩くレッドカーペットは『紅地毯』です。また小豆は『紅豆』、赤信号は『紅燈』で赤十字は『紅十字』です。中華圏で『紅』はおめでたいことの象徴です。旧正月、結婚式などの晴れ着や装飾品に紅いものが多いのもこのため。
YouTubeにアップロードしたビデオ、また歌手や俳優が『バズった』ら、それもまたお目出度いことですね。そう言うのを香港では『爆紅』と言います。例えば「Hong Kong LEIでも紹介されたMayさんのYouTube動画は香港人に大ウケで『爆紅』したそうですよ!」とかね。
ところで『赤』という漢字は使わないの? と思われました? 『赤』と言う表記でも色彩的には同じような色を表しますが、基本的に『赤』の文字は『赤字』などイメージの良くないものに使用するのだそうです。

 

『黄色』の漢字の用法は日本も中国語圏も同じ。ただ黄色から香港の人が連想する事柄がいくつかあります。一つ目はコラム第11回でも少し触れたのですが、エッチなこと。マッサージ店の看板が黄色であれば、それは「お客さん、肩こりマッサージ以上のサービスを提供しますよ」という秘密の合図です。また、友人が「九龍で香港版ラブホテルを見たよ〜!」と写真を送ってくれたのですが、それらがなんと全部真っ黄色でした!(香港のラブホテルが全て黄色というわけではないと思うのですが)。なぜ黄色とエッチなことが結びついているのかに関しては諸説あるようですが、『アメリカで低俗なゴシップ誌などをYellow Journalismと言うところから来た』という説が有力なようです。

二つ目としては、黄色は皇族が身に纏う色ということ。清朝に至っては平民が黄色を着ることを禁じたほど。絵や時代劇の中の皇族たちは必ず黄色を着ていますし紫禁城の屋根も黄色です。これは五行思想の木、火、金、土、水の5つの要素の中で、黄色で表される土が中央に来ているから、という説が一般的なようです。
最後、香港で黄色といえば、黄色い傘やリボンが象徴的だった民主化デモ活動。なぜ黄色が選ばれたかというと、1860年以降から続いた女性参政権運動において多くの団体が黄色を公式カラーとしていたことからだそうです。**

さてさて色に関しての色々な話、楽しんでいただけたでしょうか?

私はといえば、『青』の謎は解けても、脳内の混乱は解けず、今夜も味噌汁にネギの『ブルー』の部分をみじん切りにして入れようと思っています!

 

それでは皆さま、また次回!

 

*https://zh.wikipedia.org/zh-hk/青色

**https://www.bbc.com/news/world-asia-china-29473974

 


小林杏 (Anne Kobayashi)


東京都出身、青山学院大学仏文科卒。ニュージーランド、日本、フランス、英国での就業経験あり。ロンドンでの出産子育てを経て、2020年に来港。今まで住んできた土地のように、香港も愛おしい場所となりつつある今日この頃。趣味は読書、舞台芸術鑑賞とカンフー映画鑑賞。


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