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2026/11/07

夏の友は暑さを凌げる博物館です。ただ、香港の屋内はいつも冷房が効きすぎて、寒くてたまらないこともけっこうあります。夏の贅沢ですね。

今回は、夏のできごとを、11月ではありますが、振り返って書きたいと思います。

7月、香港新聞博覧館へ講演を聴きに行ったのですが、そこで、隣に座っていた、香港島生まれだという方と知り合いになりました。彼女が、セントラル・ミッドレベルズにあるジャミア・モスク(Jamia Mosque、些利街清真寺/回教清真禮拜總堂) のことを教えてくださり、その後、一緒に連れて行ってくれることになりました。

その方は出版社の編集者で、日常の光景でも上手に言葉に紡ぐ、まるで小説家のような人でした。

「ジャミア・モスクが坂の上に建っているのには理由があるの。礼拝のときが来たら、宣礼塔から礼拝を呼びかける声が響く。坂の下の街まで届くように、ここに建てられたんですよ」

ジャミア・モスクは香港で最も古いイスラム教礼拝所で、ミッドレベル・エスカレーター沿い、些利街(Shelley Street) の坂の上に佇んでいます。淡い緑の外壁が、街の風景の中で優しく目を引きます。今も地元のイスラム教徒にとって大切な祈りの場です。

最初のモスクは1849年に建てられ、インド亜大陸から渡ってきた商人、船員、兵士らの礼拝の場として始まりました。その後、信徒のコミュニティが次第に大きくなっていき、古い建物が手狭になったので、イスラム商人ハジ・モハメド・エシャック・エリアスの寄付により、1915年から1916年にかけて同じ敷地で再建されました。現在、約400人を迎え入れることができるジャミア・モスクは、香港のイスラム教徒の歴史を静かに伝えています。

2022年5月20日には、香港政府により法定古蹟(史跡)に指定され《古物及古蹟條例》のもとで守られています。

近年、香港のレストランのメニューに、イスラム教の戒律に沿った食事の選択肢が増えてきたことに気づきました。多様な宗教上の習慣に配慮した飲食店やホテルなどの施設が、少しずつ増えています。

昔、ロンドンに短期間住んでいたことがあり、家の向かいにもモスクがありましたが、その頃、イスラムの世界は遠いものだと思っていました。けれど今になって思うと、現代の国際都市香港には、さまざまな国、民族、宗教を持つ人々が暮らしていて、お互いの文化と信仰を尊重することがとても大切なのだと感じます。

中環にひっそりと佇むこの緑の建物は、わたしたちに教えてくれます。香港にはキリスト教、仏教、道教だけではなく、イスラム教も19世紀半ばから、すでにこの地に訪れていたことを。


キリ
日本語教師で旅行作家。唎酒師と観光ガイド資格。特に日本が大好きで年に10回以上は訪れる。著書に『Kiri的東瀛文化觀察手帳』(2017)、『日本一人旅』(2019)、『爐峰櫻語:戰前日本名人香港訪行錄』(2022)、『爐峰櫻語:戰前日本人物香港生活談』(2023)、『悠遊日本』(2024)、『在水一方——在日本尋找中國歷史』(2025) がある。香港の誠品商務三聯などの書店で購入可能。

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