2023/06/29

第1回のあらすじ

2022年9月末、2年半ぶりに香港から親の住む日本へ一時帰国したというりんみゆきさん。それまで「親は日本で元気に暮らしている」とばかり思っていたが、親の家で目の当たりにしたのは、草がボーボーの庭、酸素機を着けて横たわる父、記憶が混濁する母……。ショックの中で、知人から情報を得て、福祉課へ相談。何も分からないところから突然、親の介護が始まった。


福祉課で紹介されたスーパーウーマン

さっそく福祉課で教えていただいた地域のケアマネージャーさん(ケアマネ)に連絡を取ると、すぐに両親の家に会いに来てくれました。そしてそもそもケアマネとは何なのか、介護保険とは何なのかを詳しくレクチャーしてくださりました。日本各地には、地域ごとに高齢者のお世話をする介護支援専門員のケアマネさんがいて、彼女が必要に応じたケアやサポートを仕切ってくれるのです。介護保険とはいわゆる病院で提示する健康保険証とはまったく別のもので、加入するには福祉課や地域包括支援センターで要介護認定の申請をして、訪問調査員さんとの面接を受けて、介護認定審査会を通してレベルが決まるものだそう。そしてこのプロセスに一か月はかかるということ。要介護は1から5まであり、レベルによって受けられるサービスや費用の負担額が所得によって1割や3割と変わってくるそうです。初めて聞く言葉ばかりで、脳内インプットに時間がかかっていると、

「娘さん海外に住んでいるんだったら、すぐやっちゃいましょうね」と言って、

あちこちに電話をかけて介護申請の訪問日を決めてくれ、

「でもそんなに待てないわよね」とケアマネさんの特別対応で、父の車いすと医療用ベッドをその日のうちに届くように手配してくれました。また父の酸素の機械は、医師に身体障害者手帳申請の書類を記入してもらって、福祉課に提出すると機械のレンタル料が一部負担でよくなると教えてくれました。先が見えない介護はお金がかかるから、使えるサービスは賢く利用した方がいいそうです。

食事の支度が大変……という問題も、シニア宅配弁当を紹介してくれました。栄養士によるメニュー作りとカロリー計算がされていて、普通弁当以外にも糖尿病向けや退院後のやわらかめ弁当など、高齢者のニーズにあったものばかり。配達員は顔なじみになるよういつも同じ人で、安否確認もしてくれるようです。こちらは介護保険対象外ですが、一食800円以下とかなりリーズナブル。お弁当の盛り付けも食欲をそそるように工夫されていて、作ってくださっている方たちの愛を感じてあたたかい気持ちになりました。

「一人で抱え込まなくていいのよ。介護保険のサービスを利用して、ストレスにならない介護を考えましょうね」。サバサバ、テキパキ、でも寄り添って話を聞いてくれる彼女はスーパーウーマン。こんな心強い方が近くにいてくれるなら香港に住んでいても安心。わたしが香港にいても連絡が取りやすいように、ラインでつながりました。

ケアマネさん曰く、高齢者だけで生活していて子どもが遠方(特に海外)に住んでいる場合は、介護の必要がなくても地域のケアマネさんと繋がっていると、万が一何かあった時にすぐケアができるそうです。また介護保険は申請してから認定されるまで一ヶ月以上かかるので、早めにとっておいた方がいいそう。

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でも親がどの時点で介護保険の認定申請をしたらいいかなんてわかりませんよね。

気になる方は以下をご参考に。

「要介護」のチェックリスト

  • 高齢者のみの世帯である
  • 外出したがらない
  • 歩行が困難になってきた
  • よくつまずくようになった
  • 食事の量が減っている
  • 視力や聴力が衰えてきた
  • 起き上がりや立ち上がりが難しい
  • 入浴や排せつ、食事での介助が必要
  • 衣服の着脱で手伝いが必要
  • 物忘れやひきこもりなどの行動がある

(「介護をする家族のための介護と保健ガイドブック」より)

 

もちろんご両親が健康だったら、「まだそんなのいらない」とご本人が嫌がるかもしれません。その場合はどこに地域包括支援センターがあるのか確認し、また時間があったら実際に行ってみて、どのようなサービスが受けられるのかを前もって知っておくと心の準備ができていいと思います。

 

誰が介護するの?

福祉課の職員さんとケアマネさんに、病気の高齢者の二人暮らしは無理なので、施設に入るか、誰かが一緒に住むのが望ましいと言われました。わたしの生活は香港にあり、家族がいます。できるだけ来られるようにはするけど、今すぐに一緒に住むのは無理な状況。両親は家で生活をすることを希望していたので、遠方に住む比較的自由な身の弟がすぐに一緒に住んでくれることになりました。

その時のタイミングで生活環境が変わっている場合もありますが、介護が始まる前に兄弟姉妹である程度の話し合いはしておいた方がいいそうです。誰がどこまでするのか、金銭的な負担が生じる場合は誰がどれだけ払うのか、介護離職をするのか、などなど。もちろんいざなってみないとわからないことも多いけれど、親の介護問題で仲が悪くなることも多々あるそうなのです。できれば親も子も気持ちよく介護できる環境がベストですよね。

 

 

今回の介護ポイント

★親の介護が必要になったら、ひとりで抱え込まない
★親が後期高齢者(75歳以上)の場合、元気でも福祉課や地域包括支援センターでどのようなサービスがあるのかを知っておくといい
★ケアマネージャーとはラインで繋がり、いつでもコミュニケーションが取れるようにする
★兄弟姉妹で親の介護のことについて話し合っておく

 

次回は病院の付き添いと在宅介護についてです。


りんみゆき
カノッサ病院日本人通訳/グリーフケアアドバイザー2級/メディカルアロマインストラクター

香港を含め30年以上の海外生活体験と語学力を生かし、香港では医療通訳としてカノッサ病院で活動する傍ら同病院の日本語ケアラインサービスという無料のお悩み相談窓口もチームの1人として担当している。趣味はマラソン。著書に「海外のいろんなマラソン走ってみた!」(2019年5月、彩図社)がある。

どんな小さなことでも1人で悩まずにご相談ください。
無料日本語ケアラインサービス
電話:2825-5849 (月9:00-13:00、水13:00-16:00、土10:00-12:00)
カノッサ病院への日本語によるお問い合わせ
https://www.canossahospital.org.hk/ja/

IG:canossahospitalhk_jp

 

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