2023/07/08


今回ご紹介するところ

黄金海岸天后古廟
三角水上天后廟(銅鑼灣)


LEI読者の皆様、こんにちは。香港の天后廟を巡る日本人ことやんまです。一時期、日本のお茶の間でよく見かけたのが辺境の地域に住んでいる人を訪ねるテレビ番組。昔から住んでいる人もいれば、移住してきた人もいて、「なぜそこに?」と感じる裏にはちょっとしたストーリーが必ずあるものです。わたしたちが日々生活する中にも、そういった「なぜ?」を感じる場面は良くありますよね。

今回はわたしが「なぜ?」と感じずにはいられなかった天后廟を二つ紹介してみたいと思います。香港で一風変わったところに行ってみたいという方は必見です。

まずやってきたのは香港の黄金海岸(Gold Coast)です。九龍地区から西の方へ、青山公路(Castle Peak Road)をどんどん進むと現れるエリアで、ヨットクラブやリゾートホテルもあり、別荘地のような風情があります。

香港にいながら別の国に来ているような高揚感の中、危うく見落としてしまいそうな細い入口がマンションの生け垣の中にあります。紛れもなくこれは天后廟の入り口! しかしどう見てもマンションの敷地の中に廟が立っているように見えます。

あいにく訪問時は扉が閉まっていたので、思い切ってマンションの警備員に天后廟を見たいとお願いして中に入らせてもらいました。立ち並ぶ高層マンションの片隅にひっそりと、少しくすんだ緑色の二つ屋根、たしかに天后廟のようです。角度を変えて階段の踊り場から一枚、こんな写真初めてです。

黄金海岸が位置する青山公路は屯門と荃灣の間の海外線に沿った道路で、古くはいくつもの漁村が点在していました。その名残もあって天后廟がいくつもあります。この黄金海岸の天后廟もその一つで、約100年前に建てられました。後からマンション建設が決まった際、移転させずにおいたようです。柵で囲まれていることから管理主体は別に存在しているのでしょうか。先ほどの細い入口を抜けると、廟の右側から正面に回れるようになっているようですね。

廟の正確な開放時間は残念ながら不明ですが、もし近くを訪れた際はあの小さな門を探してみてください。地図で検索する際はGold Coast Tower No.4が目印になりますよ。

所変わって銅鑼灣にやってきました。MTRの天后駅から海側へ10分ほど歩くと着くのがこちらの船着場。ここから参加できるツアーで天后廟を目指します。

Walla Walla 歷史文化遊

https://www.coralseaferryservice.com.hk/wallawalla

このツアーは銅鑼湾の避風塘(Typhoon Shelter)の内側を遊覧するもので、停泊している様々な船を間近に見ることができます。11時30分の回では、正午を知らせる大砲を海から見ることも。そしてこのツアーの、あくまでわたし的な目玉なのが三角水上天后廟の観覧です。

三角水上天后廟は船そのものが廟となっている、香港唯一のいわば天后船です。ここにある天后像は元々、香港の北西に広がる珠江の三角洲にあった廟に祀られていました。1900年代の日本軍進駐に際してある漁民が自船に隠し持ち、その後、漁民たちが天后船を建造したそうです。香港には1955年に入港し、銅鑼湾や香港仔に停泊してきました。こういった水上生活者の存在というものは、香港はじめ中国南部の歴史に欠かせないテーマのひとつです。聞くところによると、海の神様である天后を個人崇拝する水上生活者は少なくなかったそうで、その延長にこの三角天后廟があるのだとしたら、まさに天后信仰の極致と言えるかもしれません。それくらい稀有な存在である天后船に少しだけ乗せてもらうことができました。

入口に掲げられた木版に「三角天后廟」としっかり名称が書かれているのも他にはない特徴です。祭壇はかなり整っているようですが、これは毎朝、関係者が門を開いてお祈りを欠かさず行っているからだそう。ただ、建造から約70年、目に見えて老朽している船から天后様が下りる日が近づいているようです。先ほどの船着場のすぐ近くに、移転先の廟が建設されていました。天后船の動向は不明ですが、おそらく処分されることでしょう。それだけに今回のツアーに参加できたことは幸運でした。

Walla Walla 歷史文化遊のガイドさん、広東語はもちろん、コテコテの香港英語でも解説してくれます。天后船が無くなったとしても、銅鑼湾の知られざる一面を学べる面白い体験が待っているので、皆さまも是非参加してみてください。

こんなところに天后廟、いかがでしたか? この他にも、墓地で埋まった山の頂上だったり、周りに人が住んでいないコンテナ置き場の横だったり、高速道路の目の前だったり、「どうして?」と思うような場所にある天后廟に行きました。情報が簡単に見つからなくても、きっとそこに建てられた理由があって、参拝する人がいて、そうやってこの時代まで残ってきたことだけは伝わってきます。100の天后廟があれば100のストーリーがある、次はあなたがその証人になるかもしれませんよ。


やんま
2020年10月から出張で香港入り。仕事の傍らになんとなく始めた天后廟巡りにハマり、その魅力をSNSで発信するようになる。やんまは小学生時代のあだ名から。


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