2024/09/25

Mirrorという香港のアイドルグループをご存じですか？ 香港出身の男子12人で2018年に結成されたアイドルグループです。日本ではまだまだ知名度が低い彼らですが、ここ香港では絶大な人気を誇ります。メンバーの一人Keung To（姜濤）のお誕生日には銅鑼湾が「姜濤灣」、Anson Lo （盧瀚霆）のお誕生日は尖沙咀のフェリー乗り場が「教主碼頭」にそれぞれ名前を変え、そのエリアをファンが埋め尽くす……という年中行事をご存じの方も多いと思います。そして、歩けばバスの車体に、ビルボードに、地下鉄の広告などなどで……。ここ香港で彼らの姿を見ない日はないと断言できます。

「歌は世につれ、世は歌につれ」というフレーズがありますが、流行歌はその時代の世の中を映し出します（鏡のごとく！）。ならば香港で社会現象とまで言われ、ヒット曲を飛ばし続けるMirrorの曲が今の香港の世相を映さない訳がありません。12人のメンバーはそれぞれ、歌に映画にドラマに、マルチに活躍しています。そんな彼らの活動を通して、香港を覗いてみませんか？ ここ香港でMirrorにハマり、彼らのことを深く知りたい気持ちが高じて大学院で香港について学び始めた Hong Kong LEIのライター紅磡リンダが、Mirrorを通して香港の今を楽しむ方法をランダムに、徒然なるままにお伝えします！

≪目次≫

１ページ

香港ってどう？－Mirror越しに楽しむ香港映画

Mirror越しの味覚－旬の香港式おやつ

２ページ

Mirror越しの伝統行事－今時の伝統行事

Mirror越しの散歩道－香港タイムマシン

香港ってどう？－Mirror越しに楽しむ香港映画

2024年８月、日本に一時帰国した時のこと。香港好きだけれども、仕事やコロナ禍で長いこと香港に来ていないという方からの、こんな質問が印象的でした。「香港って、まだ広東語の歌を出してもいいんですか？」ああ、一般よりも香港が好きという方ですら、香港の現状を理解するのは簡単ではないんだなと実感した瞬間でした。香港に在住していても似たような方は多いかもしれません。毎日過ごす相手は日本人ばかり、香港人とはあまり付き合いがなく、香港状況はわかりにくいという方もいらっしゃると思います。わかります。わたしもMirrorと出会うまではそうでした。
大学院で学びはじめるという極端な手段は取らずとも、香港を知るなら、まずは香港映画はいかがでしょう。観るだけで、気軽に楽しく今の香港がわかること、請け合いです！

今、香港映画を観るべき理由はMirror以外にもあるのです。

かつてはブルース・リー、ウォン・カーワイ、ジャッキー・チェン、チャウ・シンチーなど誰でも名前を知るような監督や役者を輩出していた香港ですが、2000年代になると勢いが衰え、映画の製作本数も大幅に減ってしまいました。そんな香港映画を再び活性化させようと今、政府は大きくテコ入れをしています。基金を立ち上げ、映画製作に助成金を捻出したり、新しい監督を育成するプログラムを提供、ロケーションのサービスも行う、具体的かつ本気度の高い取り組みです。また、実際の映画撮影の現場では新旧映画人のコラボレーションが推奨され、Mirrorメンバーのような新しい才能をベテラン俳優や監督と組ませたり、新人監督と大御所俳優を組ませる、などノウハウを次世代に引き継ぎ、新しい形の香港映画を輩出するための様々な新しい試みが行われているのです。そう、今、新しい香港映画の息吹が出始めているのです！

さらに。香港映画は積極的に海外とのコラボレーションすることも特徴の一つですが、2018年以降はコロナの影響で、海外ロケや海外の俳優・スタッフの起用が難しくなってしまったのです。裏を返せば、コロナ規制中に制作された香港映画は、ロケーション、監督、役者、スタッフを香港内でまかなう努力をしたということ。この間に制作された映画のストーリーも香港フォーカスのものが多数。そう、今こそ香港を知るのにぴったりな映画が揃っていると言えましょう。ここで香港の、香港による、香港を楽しめる映画（with Mirror）をご紹介します。

≪今の香港が直面する社会問題を、笑いながら学べちゃう≫

「死屍死時四十四」（2023年）

Edan（呂爵安）とJer （柳應廷）、２人のMirrorのメンバーが出演のコメディー映画。自宅前に全裸の死体が出現……？ そんなショッキングな状況に置かれたマンションの住人達のすったもんだを通じて、住宅問題、海外移住問題、駐車場不足問題などなど・・・香港の人々が直面している社会問題を描き出しています。これを観れば、香港人との日常会話の理解の助けになること請け合い。俳優としては新人のEdanはこの映画で第42屆香港電影金像獎（香港アカデミー賞）最優秀新人男優賞にノミネートされました。

〈映画情報〉
タイトル（制作年）：死屍死時四十四（2023）／英タイトル　Over My Dead Body
監督：何爵天
主演：毛舜筠、黃又南
呂爵安（Mirror）、柳應廷（Mirror）
Instagram：https://www.instagram.com/overmydeadbodymovie/
Facebook：www.facebook.com/movieovermydeadbody
予告トレイラー：https://www.youtube.com/watch?v=57EFTCu

≪超ベテランと新人のタッグ大成功例≫

「命案」（2023）

2023年の香港のサスペンス映画で、主演はベテラン俳優の林家棟、そしてMirrorの隊長、Lokman（楊樂文）。つまり香港芸能人協会の副理事まで務めるベテラン俳優と、映画出演は２回目の俳優としては新人のLokman を組ませた、香港映画業界の次世代養成への本気度が感じられる作品なのです。「彼にしかできなかった」とマスコミが絶賛したLokmanの迫真の演技は必見です。ちなみに本作品の監督は2024年８月現在絶賛上映中、総来場者で香港映画市場の記録を更新中のアクション映画「九龍城寨之圍城（Twilight of the Warriors: Walled In）」鄭保瑞。

〈映画情報〉
タイトル（制作年）：命案（2023）／英タイトル　Mad Fate
監督：鄭保瑞
主演：林家棟、楊樂文（Mirror）
Instagram：https://www.instagram.com/madfate2023/
予告トレイラー：https://www.youtube.com/watch?v=yV6hi2RGjvU

≪香港人も怖がるモノ探し≫

「七月返歸」（2023）
Anson Kong 主演のホラー映画。この映画の見どころは、香港人が見るとハッとする、昔の色彩や思い出に結びつく仕掛けの数々。映画全体にちりばめられているそれらの「鍵」を発見することで香港への理解が深まります。例えば、舞台になっているのは香港の公共住宅「愛民邨」。戦後の復興期、経済成長のさ中、勢いがあった頃の香港の象徴です。そして、映画のタイトルにもなっている７月は鬼月とも呼ばれ、あの世から先祖の霊とともに悪い霊もこの世にやってきて悪さをすると言われる月です。

また、映画全体に流れるトーン、そして映画の中に出てくる子どもの遊びがかつて香港中の子どもを震え上がらせた「九廣鐵路廣告」という広告に似ているという点を指摘する人もいます。単なる香港式ホラー映画としても十分楽しめる映画ですが、こういった香港にまつわる鍵を一つひとつ説く楽しみも味わえる、深い映画です。

〈映画情報〉
タイトル（制作年）：七月返歸（2023）／英タイトル　Back Home
監督：謝家祺
主演：江生※（Mirror）、白靈
Instagram：https://www.instagram.com/backhome606/
予告トレイラー：https://www.youtube.com/watch?v=i7xDrL55KdM

Mirror越しの味覚－今が旬の香港式おやつ

Mirrorが身を置くエンターテインメントの世界。いつの世もこの世界はキラキラしていて、流行に敏感な人たちが身を置いています。そう、Mirrorのもとには日々、トレンディーなスタッフが買い求めた流行のおやつが並び、メンバーのIGにはしばしばそれらの写真がアップされるのです。香港で最新のおやつトレンドはここでバッチリチェックできます。以下、その中でも最新、自信を持ってプッシュできるものをお勧めします。

流浮山窯燒雞

パリパリの皮としっとりと柔らかな肉が美味なローストチキンのお店。店名の通り以前は新界の流浮山というちょっと遠い場所にありました。ところが荃湾に移転したとたんに人気急上昇！続いて、こちらの新蒲崗にできた支店は連日列ができるほどの人気店に。ライチの薪でローストされたチキンのおいしさはMirrorのLokman, Alton（王智德）, EdanだけでなくMirrorの生みの親であり、敏腕マネージャーである花姐のお墨付き。１席のみテーブルがありますが、テイクアウトが基本のお店。チキンは一羽単位での販売なので、ご家族、お友達と一緒にどうぞ。

〈店舗情報〉
店名：流浮山窯燒雞 （新蒲崗店）
住所：新蒲崗大有街14號萬星工業大廈地下C5B號舖
営業時間：12:00- 21:30
Instagram：https://www.instagram.com/kiln_chicken_sanpokong/

民豐粉麵行

2024年７月、Anson LoのInstagramに登場したのが、日本の大福もちに似たお団子、「糯米糍」。荃湾市場に隣接する「民豐粉麵行」のものです。こちらは1956年創業の、ナマ麺、餃子、ワンタンなどをメインに販売するお店ですが、かねてから糯米糍がおいしいことでも知られていました。伝統的な胡麻、小豆、ピーナッツのあんが入った糯米糍は皮がとろりと柔らかく、飲み物と表現する人もいるほど！ Anson Loは文字通り、これを一飲みにしておりました（推奨はしません）。彼のお気に入りは伝統的な小豆あん（広東語では紅豆）のようですが、実はこの糯米糍、２月に旧正月用に販売を始めた新しいフレーバーの一つ「ピスタチオ」が現在、爆発的人気となっています。ピスタチオはその後、レギュラーメニューに採用されましたが、連日待ち時間が30分から１時間という長蛇の列ができているそう。お店の公式インスタには列の攻略法も紹介されているので、是非ご参照ください。

〈店舗情報〉
店名：民豐粉麵行
住所：荃灣荃灣街市街35號
営業時間：08:30 – 22:00
Instagram：https://www.instagram.com/manfungfood/

楓Café

近年のおやつの流行は上記のようなカジュアルなものにとどまりません。たとえばこちらのカフェです。九龍サイドの下町、深水埗はにぎやかな雰囲気と電気製品、そして手芸用品で知られる街でしたが、コロナ禍で閉店するお店が相次ぎ、空き店舗が急増しました。現在はそれらの空き店舗が次々におしゃれなカフェや雑貨店に生まれ変わり、深水埗エリア自体がおしゃれなスポットに変化しつつあります。そのスピード、毎日どこかで新店舗が開店しているのではないかと思うほど。この新興おしゃれ街でおやつを楽しむのは、Mirror一の色男Frankie（陳瑞輝）。彼が訪れた楓カフェは日本レトロを意識した落ち着いた趣で、シフォンケーキや黒糖ほうじ茶など、趣向を凝らしたケーキが楽しめます（昭和っぽい見た目とリッチな味わいが魅力の期間限定のカスタードプリンの復活、心から願います！）。

〈店舗情報〉
店名：楓子珈琲 Fonji Cafe
住所：太子楓樹街5號南楓樓地舖
営業時間：12:00-19:00 （月曜休）
Instagram：https://www.instagram.com/fonji.cafe/

２ページ目は、香港の年中行事とおすすめ街散歩です。

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