2024/11/01

今年も早いものでもう11月。もうすぐ１年も終わりだとしみじみする月ですが、我々鏡粉にとってはひときわ感慨深い月でもあります。そう、この月は2018年11月にデビューしたMirror のお誕生月なんです。

Mirrorは今年、６周年を迎えます。６歳といえば、日本では小学校入学の年。おぎゃあと生まれた赤ちゃんが、ハイハイして、歩けるようになって、しゃべれるようになって、幼稚園を卒業。幼児と呼ばれる時代を終えて、本格的な学びを開始する年齢です。今回はMirrorの小学校入学（？）を記念してデビューについて掘り下げて考えてみました。

オーディション番組時代のメンバーは普通の男の子。彼らの中にスターの片鱗を見出したマネージャー花姐の眼力に拍手！

2018年11月３日、現在も続く香港の人気オーディション番組「全民造星」第１回目の入賞者を中心に結成されたMirrorはこの日、MTR鑽石山駅に隣接したショッピングモール「プラザハリウッド」にて初めて「Mirror」として登場、デビュー曲「一秒間」（リンクの動画10:00～）を発表しました。こちらの動画からもわかる通り、Mirrorが生を受けたこのステージはかなり質素で、音響も悪い、小さなものでした。しかも場所はなぜか鑽石山。いわゆる香港の中心であるセントラル、銅鑼湾、尖沙咀からはかなり離れていますし、Mirrorが所属する会社からも近くはありません。そんな場所でデビューを飾ったのはどうしてでしょうか。

結成から６年を経た現在。世界ツアーも大成功し、まごうことなき大スターに成長しました！ @angie.hather

調べてみると、デビューのステージが設置されたショッピングモール「プラザハリウッド」はかつて大磡村と呼ばれた不法占拠地域の跡地に建てられたという経緯がありました。そう、今あるキレイなショッピングモールは1990年代まではバラックが立ち並ぶ貧民街だったのです。作家・経済評論家の邱永漢氏は若い頃、このバラックに住み、その様子を直木賞受賞作『香港』に記しています。彼によるとここは水道が通っておらず、水汲みが日課という過酷な住環境。住民は不法移民や、何の職業についているか見当がつかない、その日暮らしの人ばかりだったとか。

陳果（フルーツ・チャン）監督の名作、『ハリウッド★ホンコン』（2001年）ではこのバラックを見ることができます。この作品は政府による立ち退きが進み、ほぼ撤去が終わっていたバラックの、最後まで残っていたエリアで撮影されたのです。増築に増築を重ね、錆びたトタンの壁、何度も補強された、廃材と思しき屋根・・・至るところに社会の底辺に位置する人たちが人々が、貧しくも逞しく生きてきたしるしを見ることができます。そう、この場所はまさしく香港人の生きる哲学「獅子山精神」を体現してきた場所なのです。

さらに、この映画の原題『香港有個荷里活』の直訳は「香港にもハリウッドがある」。この鑽石山には映画の製作地としてのもう一つの顔があるのです。このエリアには1950～60年代にかけて「大觀片場」「嘉禾片場」などの映画スタジオがあり、海外に香港映画を送り出す一大拠点として知られ、有名な映画スターたちが撮影のためにこの地を訪れました。ブルースリー（李小龍）もその一人。そう、鑽石山は「邵氏片場」の清水湾と並んで「東洋のハリウッド」とも言うべき存在でもあったのです。そしてショッピングモール「プラザハリウッド」はその歴史的背景にちなんで命名されたとのことです。

貧しかった頃の庶民を描いたドラマ『獅子山下』は香港人の琴線に触れ、大ヒット。香港魂は『獅子山精神』とも呼ばれるように。

厳しい環境でも逞しく生きる「獅子山精神」を体現し、さらに海外で通用する香港映画を続々と生み出した場所、鑽石山。この地が放つパワーにあやかるべく、Mirrorはここをデビューの地に選んだのではないでしょうか。最近、報道からはMirrorに関する醜聞がちょこちょこ聞こえてきますが、子どもが様々な問題を乗り越えて成長するのと同じ。成長のいち過程にすぎません。Mirrorがさらに大きく成長する様を母の気持ちで応援し続けたいと思います。

鑽石山から生まれたアイドルは香港精神そのもの。逆境にも負けず頑張ってね、Mirror！

紅磡リンダ（ほんはむ りんだ）
20年にわたる英国生活、広告代理店勤務、編集者稼業に終止符を打ち、2019年に香港に移住。
移住とともに人生で初めてアイドルに目覚め、Mirror 沼に沈没。沼から鏡（ミラー）越しに見える、新しい香港を発見する毎日を送る。

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