2022/11/08


今回ご紹介するところ
樂富天后聖母古廟
海國天后古廟


LEI読者の皆様、こんにちは。香港の天后廟を巡る日本人ことやんまです。

前回に引き続き、天后廟を巡る小旅行に出かけましょう。
MTRの緑の路線・觀塘線で向かったのは樂富という駅です。なんとも縁起の良さそうな名前ですが、それもそのはず、元々は老虎岩(Lo Fu Ngam)という地名だったのを、発音が似ているからと1970年頃に樂富(Lok Fu)に変えたのだとか。駅の周辺は公営住宅がたくさん立ち並んでいますが、少し歩くと沢山の公園が、そして1件の天后廟があります。

小高い丘の上にあるので行き着くまでに少し苦労しますが、この廟を前にすれば疲れも忘れて見入ってしまうことでしょう。金と赤を基調にした見事な色彩。細部までこだわった立体彫刻。柱の一つ一つに記された金文字。豪華絢爛とはまさにこのことかと思わせる立派な天后廟です。特に手前の柱に施された龍の彫刻が見事です。自分の運気がグングン上がっていくような、そんな気持ちがしますね。

中に入っても絢爛さは続きます。香港では金色と赤色は縁起の良い組み合わせとして知られており、天井に掲げられた数多くの灯籠や壇前の装飾がそれを物語っています。左に太歳殿、右に觀音堂が併設されているので、忘れずに参拝しましょう。

この樂富天后聖母古廟は1801年の創建で、古くから九龍地区に住む人々の信仰を集めてきました。現在は慈德社という日本で言うところの宗教法人が管理・運営をしており、慈德社天后古廟とも呼ばれています。この場所は黃大仙區に属しているのですが、香港で一番有名とも言われるあの黃大仙祠より歴史が古いのです。これまでに何度も建て替えが行われ、現在の廟は2001年に建て替えたものだそう。今後の動向は分かりませんが、この絢爛さは後世にも引き継いでいってほしいと思います。

ちなみに、1962年の台風で廟が破壊されたことがあったのですが、天后像は無事だったというエピソードがあります。絢爛さと併せて九龍の隠れたパワースポットだと思っているので、おすすめの天后廟を聞かれた時、わたしは必ずここを挙げることにしています。読者の皆様もぜひ一度訪れてみてください。

再び觀塘線に乗って東へ進みましょう。次の下車は觀塘駅、大小さまざまな企業や作業場が入る工業大廈(ビルディング)が立ち並ぶエリアです。そこからバスに乗ること20分、やってきたのは秀茂坪(Sau Mau Ping)という住宅街です。山を切り崩して造成されたので、このように上下移動のためのエレベーターが。

そんな秀茂坪に一風変わった区画があります。山の中腹で、交通量の多い交差点に集められた低層の建物たち。なんとそれぞれが独立した道教寺院になっています。これはtemple complex (テンプル・コンプレックス) とも呼ばれるもので、異なる信仰神が祀られた廟を同じ敷地に集めてしまうという驚きの形態なのです。前回紹介した油麻地も広義にはtemple complexと言えるでしょう。

temple complexが成立する所以は様々ありますが、この秀茂坪の場合は、宅地開発で移転を余儀なくされた4つの廟を集めて出来上がったようです。このようにすれば管理もしやすいですし、参拝もしやすいですし、実はwin-winな考え方なのかもしれません。
日本では移転すること自体が禁忌のように言われるので、temple complexの考え方をわたしは面白いと感じており、香港に特徴的な様式なのだろうと捉えています。それに、土着信仰は一度でも衰退するとその後の信仰が途絶えやすいですから、やはりこの考えは理に適っていますね。線香を持った人が急に歩道に出て来ても慌てないようにしてください。


そんな場所にあるのが海國天后古廟なのですが、さてここでクイズです。この天后廟が持つ大きな特徴はなんだと思いますか?

 

 

 

 

 

 

正解は「祭壇が上層階にある」でした。
敷地が限られているがゆえなのでしょう、下層は主に倉庫として、また、周辺に住んでいると思われる老人たちの憩いのスペースが設けられています(分かりにくい写真で申し訳ありません)。

その人たちを横目に左手の階段を上がると、まるで姉妹のような、もしくは仲の良い親子のような、柔らかい表情を見せる三体の天后様があなたを迎えてくれます。祭壇には奉納物が所狭しと並べられて賑やかな装い。

静かに手を合わせてから振り返ると、くつろぎスペースにいた老人が「おまえは何者だ?」という視線を向けていることでしょう。線香を持って巡り歩く人に驚いた後ならもう大丈夫です、天后様に負けない笑顔で挨拶を交わしましょう。天后廟の他にも、大聖廟、城隍廟、觀音廟があります。樂富とはまた一味違うパワースポットで英気を養ってみてください。

今回はこの辺で失礼します。また次の天后廟でお会いしましょう!


やんま
2020年10月から出張で香港入り。仕事の傍らになんとなく始めた天后廟巡りにハマり、その魅力をSNSで発信するようになる。やんまは小学生時代のあだ名から。

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